【群馬県】ものづくりの誇り – 井上みどりさんが電子部品の現場で見つけたもの

⚙️ ものづくりの誇りという選択
「自分にもこんな場所があるなんて、思ってもみなかったんですよ」。群馬県中央の工場で働く井上みどりさんが、少しはにかみながらそう語ってくれた。38歳、子育て一段落で再就職。穏やかに微笑む表情からは、かつての辛い日々を想像することは難しい。けれど、ここに辿り着くまでには、誰にも語れない苦しみと迷いの時間があった。職人技を磨いて、誇りある仕事人生を歩むそれを体現するような物語が、井上みどりさんにはある。
実は井上みどりさんも、ここに来るまでは決して順風満帆ではなかった。子育て一段落で再就職、職を転々とした時期もあり、自分に何ができるのかと悩む日々が続いていた。「どこかに、自分が必要とされる場所はあるのだろうか」。そんな問いを抱えながら、毎晩スマートフォンで求人サイトを眺める日々が続いた。条件のいい仕事は経験者ばかりが求められ、自分には手の届かない世界に思えた。家族からの「いつまで仕事を探してるの?」という何気ない言葉が、刃のように胸に刺さる夜もあった。それでも、希望を捨てることだけはしたくなかったという。

新たな一歩
応募してから入社までの2週間は、まるで生まれ変わる準備の時間のようだった。新しい寮、新しい同僚、新しい仕事——すべてが楽しみで仕方なかった。井上みどりさんはその期間、引っ越しの準備をしながらも、ふと立ち止まっては「本当にこんな未来が自分に来るのだろうか」と何度も思ったという。家族や友人にも報告し、皆が応援してくれた。出発の前日、母親から「あなたなら大丈夫よ」と言われた一言が、心の支えになった。
入社してすぐ、ベテランの先輩が一対一で仕事を教えてくれる体制になっていた。井上みどりさんを担当してくれたのは、勤続15年以上のベテラン社員だった。「焦らなくていいよ。3ヶ月くらいで一通りできるようになるから」と言ってくれるその先輩の言葉が、何よりも心強かった。難しい場面に直面しても、すぐに飛んできてフォローしてくれる。質問すれば嫌な顔ひとつせずに教えてくれる。井上みどりさんはここで、生まれて初めて「自分は大切にされている」と感じたという。
成長と仲間
3ヶ月が過ぎる頃には、井上みどりさんの動きは見違えるほどスムーズになっていた。最初はぎこちなかった手元も、今では先輩たちと並んでテキパキと作業をこなす。当初は1日かけてやっていた工程を、午前中に終わらせられるようになった。「自分でも驚くくらい、できることが増えていきました」と振り返る。先輩からも「飲み込みが早いね」と褒められ、それが何よりの自信になった。仕事の段取りを自分で考えられるようになり、毎日が単なる労働ではなく、自分の成長を実感できる場へと変わっていった。
工場の食堂では、群馬県の郷土料理が定期的に提供される。地元出身の同僚が「この味、懐かしい!」と喜び、他の地域から来たメンバーも「群馬県ってこんな料理があるんだ」と興味津々。食事を通じて、仲間同士の距離もぐっと縮まる。井上みどりさんも、最初は知らなかった群馬県の食文化を、すっかり気に入ってしまった。「こうやって新しい土地の文化を知ることも、出稼ぎの楽しみの一つです」。仕事だけじゃない、生活全体が豊かになっていることを実感している。

忘れられない出来事
ある晩、井上みどりさんは寮の屋上で星を見ていた。群馬県の空は、都会では見られないほど星がきれいだった。仕事帰りに屋上に上がる習慣は、いつの間にか井上みどりさんのささやかな楽しみになっていた。子育て一段落で再就職の時には想像もしなかった、こんな穏やかな夜を過ごせる自分。「人生って、変わるものなんだな」とぽつりと呟く。明日もまた、新しい一日が始まる。それを楽しみに思える自分がいることが、何よりも嬉しかった。
そして今
「自分の手で作ったものが、世の中の役に立っている」。そう思えることが、井上みどりさんにとって何よりの励みだ。電子部品の現場で生み出される製品は、確かに人々の生活を支えている。スーパーで自社製品を見かけた時、街中で自分が組み立てた部品が使われている製品を見つけた時——胸の奥がじんと熱くなる。「自分の仕事が、誰かの何気ない日常を支えている」。その実感は、ただ給料をもらうだけでは得られない、深い誇りを井上みどりさんにもたらしてくれる。
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